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第11回・『自然体験とインタープリテーション』

―人間性回復と持続可能な社会の構築に向けて―

日程
日時 平成20年5月10日(土)〜11日(日)
場所 向坂山森林公園


セッション1
基調講演
演題 「森林環境教育とプログラムの実際」
講師 増田直広氏 ((財)キープ協会環境教育事業課長)

レンジャーとインタープリター
 私が普段活動している所は山梨県の八ヶ岳という所です。標高が1400m位になる所が僕の職場なんですけど、一番高い所で標高が2899mになります。九州の中で一番高い山は、屋久島の山ですね。これよりも少し高いですかね。3000m位の山が周りを囲んでいるような所です。僕が働いている職場はその中腹くらいの1400mになります。まだ雪が残っています。八ヶ岳の中でも赤岳という朝日が当たると真っ赤になる山があります。それを赤岳といいます。標高2699mになるそんな所から僕は来ました。
 職場は、標高が高いためにまだ雪がほとんどなくなったばかりです。長野県や山梨県に多く植林されているカラマツの葉っぱがやっと5mmくらい出始めたところです。その時期が一番綺麗なんですけどね。そしてこんな花も咲き始めました。ダンコウバイという楠木の仲間なんですけど、この辺りにもあるんでしょうか。すごくいい香りがする木です。僕らはそれをちょっとだけ枝を折って匂いを嗅いだりなんてことをよくします。やっと春がやってきたなぁというのが僕の職場のところです。
 少しだけ自己紹介をさせて頂くと、僕は『キープ協会』といいまして財団法人(これは民間の財団法人で、どっからかお金が降ってくるわけではなく自分達でお金を稼ぐしかないのですが)そこでレンジャーという仕事をしています。皆さんはレンジャーという言葉を口にしたことがありますか?。あるいはこの辺りでレンジャーと名乗っている人っていますか?。環境省にはレンジャーと名前の付いている職種があります。日本全国で300人位しかいないと言われています。
 その300人位がアメリカへ行くと一つの国立公園でそれ位の人数がいるとも言われていますけど、このレンジャーという言葉、よく子供に聞くと『○○レンジャー』、古くは5レンジャーというところから始まりますけど、実は僕がやっているそのレンジャーというのもテレビ番組で出ている『○○レンジャー』と一緒なんですね、実は。テレビ番組の『○○レンジャー』というのは地球の平和を守っていますが、僕の場合、あるいは環境省のレンジャーの場合は自然を護っているという事ですね。「護る」或いは「伝える」というのがこのレンジャーの仕事です。
 そのレンジャーの中で教育活動をしている人の事を、「インタープリター」という風に僕らは呼んでいまして、僕はその仕事をしています。もともとレンジャーというのは、レンジという英語がありまして、『その範囲』という意味なんですけど『その範囲を守る』という事でレンジャーという名前が付いています。
 僕は森の案内をする事が多いんですが、特に最近は企業との共同プログラムですね。例えば『サントリー』ですとか『エネオス』とか『NEC』といった、大きな企業が社会貢献をしたいという。『社会貢献したいんだけれども自分達にそのノウハウがないので教えて下さい。』というのが僕らのところに来るんですね。僕らとしてはすごく小さな団体ですから、企業と共同することはもちろん、お金が入ってくるという意味ではすごくうれしいですし、自分達ではなかなかしきれない事が、大きな団体と組む事で出来るということで、最近ではその関わりが多いですね。
 CSRという言葉があるんですが、『企業と社会的責任』という英語の略なんですけど、企業は社会と繋がっていかなくては、自分達も消費やサービスを受けたいということでその関わりあい方を狙っています。そして省庁とか実際の指導者養成、僕らのような森の案内人の育成を僕はしているんですが、環境省、或いは自治体等でおじゃますることがあります。僕はお声がかかればどこへでも行くので、3日前は岐阜県のある専修学校でお話をしたりとか、明日からは北九州に行くんですけど、北九州では、ある企業のお手伝いでプログラム作り、森の中での活動作りというのをすることになっています。
 実際にプログラムを指導する仕事よりもマネージメントという風に呼んでいますけど、管理する仕事が多いです。僕は課長という仕事を頂いたばかりで、そういう部分で管理する仕事が多いんです。

『じんじきんこんあん』
 ちょっと不思議な言葉が並んでいます。『じんじきんこんあん』という言葉。これはよく環境教育とか自然体験のマネージャーの人が管理する言葉ですよ、という風に紹介されるんですけど、皆さん『じんじきんこんあん』という言葉聞いたことがありますか?。一つの言葉でですね、(じん)で切れて、(きん)で切れて、(こん)で切れて、(あん)で切れる。それぞれのものを管理者、マネージャーというのは見るんですよという事なんですけど、皆さんなんとなく想像つきますか?。
 (じん)て何でしょうか。(じん)は人なんですね。スタッフとかあるいは参加者という人ですね。そういう人達のことをみる人がマネージャーです。
 そして(じ)は何でしょう。これ実は『時間』なんですね。時間の管理をしましょうよ。スケジュールの管理。今回のように『シンポジウムは何時から何時までですよ』あるいは僕らのような仕事はもう残業ばかりなんですよね。でも僕らとしては残業をちょっとでも減らしていかなくてはいけないなぁという事でその時間の管理という事もあります。
 (きん)は何でしょう。非常に解りやすい。『お金』です。『環境教育、自然体験の仕事はボランティアで当たり前だ』というような考えが実は広まっているんですね。でも僕らは、対価を頂いてこの仕事をしています。お金を頂けないとこういった事って出来ないですよね。で、お金を頂く事がこれが仕事にならないと、若い人達が例えばその地域で働きたいという時に、今の仕事がないだけじゃなく新たな仕事を作り出すという事が、僕は環境教育を通してどうしてできるかなと思いますが、その時ちゃんとお金が稼げるんだよということもやっていかなくちゃいけない。だから僕らは色々な活動にお邪魔する時にお金を頂くという事を基本的にしていきます。
 そして(こん)という言葉、(こん)は何でしょう。学校の先生に前に話した時、学校の先生から(こん)は根性だということ言われましたけど、根性ではありません。これだけちょっと英語になっちゃいますけど、『コンセプト』といいます。解りやすくいうと『狙い』と言う事です。その活動で何をしたいのかという事です。ですから今回のこの講演のシンポジウムでしたら、このシンポジウムで何をしたいのかというのがコンセプトということです。
 そして最後は(あん)です。(あん)は何でしょう。今日実は僕も歩かせて頂きました。森の中を歩く上ですごく大事な視点かなと思います。『安全』です。安全管理というのはすごく重要ですね。今日は歩かせて頂きましたが、不思議と風倒木、その木が倒れている所を迂回するルートを作って頂きましたけど、あれが『安全』という事ですね。ちゃんと安全管理をしようよという事、そして歩く前にはきちんと歩くのに相応しい格好をしているか、という事のチェックをするなんてことも僕らはやります。カッパを着ていなかったりとか靴の紐がほどけていたりとか(そんなんで歩く人も居るんですけど)そういう部分をチェックするという事が『安全』です。そういう『じんじきんこんあん』というものが自然体験の今回の大きなキーワードになっています。こういう事をする時に大事ですよ。という風に言われています。

当たり前じゃないところからスタートする
 僕の出身は、群馬県の桐生市という所です。桐生市という所、皆さんご存知でしょうか。関東の北の端にあります。昔は絹織物が有名な町でした。西が京、東が桐生という風に言われていた所なんですけど、最近ではその織物工場もどんどん潰れていっていまして織物工場の跡地を使ってですね、パチンコ産業がすごく盛んなんですね。そして渡良瀬川という川がすぐ近くにありまして、日本で一番初めに鉱害が起きたといわれている所(足尾銅山という所)があるんですが、そこが僕の桐生の少し上に上がったところです。昔から魚取りとか川遊びが好きだったんですが、そのまま僕はそれを今も仕事にして、魚取りのプログラムを、好きな事をやって仕事にしているという事でしょうかね。
 そして、大学生の頃に環境教育というものに出会っています。『生涯学習』という『人間が一生涯の中で環境教育やっていこうよ』とか、川がメインフィールドでしたので『川でどんな環境教育ができるのか』そして『地域づくり』が僕の専門でした。僕はもともと大学の教員になろうかと思っていたんですが色々と縁がありまして、今は現場、実践の場で働いています。ただ、自分達が活動したことを少しでも形にしてお伝えしたいなぁと思いまして、今回のようにお邪魔できる時には、これまでの考えを整理してお伝えする事があります。
 僕自身は『キープ協会』という所で働き始めて12年目です。最近の大きなトピックは家造りをしまた。新居なんですが、ほんとにごく一部だけ自分で家を造ったんですけど、ちょっとした土地を買いまして、そこに生えていたカラマツを切ってそのカラマツを構造材にして家を造ってます。そして同じく敷地内に生えていたシラカバとかハンの木をそれぞれ加工してもらって、そんな家造りをやって自分達で、できるだけ作業したいなぁという事で家の外壁とかシックイを塗ったりなんて作業もしました。つい最近はブドウ畑造りなんかもしました。
 最近、人から離れている家造りというものを自分の手に戻そうじゃないかなんて動きが今盛んになったりしているんですけど、その中で僕らは『自分達に出来ること』という事でこんな事をやっています。この家造りの話をすると1日あっても終わらないかもしれないのでこの辺りにしようかなと思います。
 僕の家から見える八ヶ岳という山、さっきご紹介しましたけど僕の家の周りには今、田んぼがありまして水が流れています。これから田植えが始まる所ですね。もし八ヶ岳周辺に来る機会があったら僕の家が近くにあるかもしれないので、キョロキョロとしてみてください。
 それでは、皆さんにちょっと参加して頂きたい事があります。このスクリーンには何が写っているのでしょう?。お隣の人とか近くの人と話し合っても結構ですので、これ何が写っているか考えてみて下さい。ある人がこんな事を言っていました。『トンネルがここにあってトンネルに入ろうとする女の人の後ろ姿』。あるいは『ここにチンパンジーが写っている』という方。同じく『ここに宇宙人が写っているよ』という方もいました。
 実は、これ少しぼやけていますが、鮮明にするとこんな風に見えます。『女の子がソフトクリームを食べている』。実は、これは牧柵なんです。牧場の柵の間から女の子が顔を出してソフトクリームを食べている。なんとなく見えてきましたか。なんでこんな話をしているかというと、ちょっとした面白い事件がありました。僕らは、年に何回か参加者に対して、通信を送っていたんですね。その通信の中にこの写真を使ったんです。この写真付きで通信を送りましたところ、ある人から連絡があって、『今回送られてきた通信に心霊写真が写っているよ』と。この薄っすらとした部分だったんですね。僕らとしては当たり前のように、女の子が牧柵から顔を出してソフトクリームを舐めている写真だったんです。でもそれが多少印刷も良くなかったということもあると思いますけど、心霊写真の様に見えてしまった。その時、僕らは思ったんです。やっぱり僕らが当たり前に思っている事って、なかなか当たり前には伝わらないんだなと思いました。でも、それって僕らがやろうとしている環境教育とか自然体験も一緒だなぁと。
 『地域の自然大事ですよ』と僕らは言っています。僕らは、それが当たり前だと思っています。でもそれが地域に住んでいる他の人には当たり前じゃない事なんですね。あるいは、ある人にとって『この植物は凄く大事ですよ』と、当たり前のような事が他の人には当たり前じゃないことがあるんです。ということは、僕らが環境教育とか自然体験する時には、当たり前からスタートするんじゃなく、当たり前じゃないところからスタートする必要があるんじゃないかという事です。その当たり前じゃない部分を当たり前のように共通の言葉を作っていく活動が、今日皆さんにお話しようと思っている『インタープリテーション』というものなんです。こんなことを皆さんにまずご紹介したいと思います。

『キープ協会』について(スライドを見ながら)
 今日皆さんにお話しようと思っている事をいくつか挙げます。まず少しだけ自己紹介を先程しました。そして『キープ協会』という所で僕は働いていますのでそのお話を少ししようかと思います。そして『環境教育て何だろうな』というお話。そして環境教育の中でキーワードは『体験』と言われていますので、『体験て何だろうな』というお話。そして『プログラム』。今日も演題にプログラムと書いて頂いてますが、プログラムって当たり前のように使っていますが、プログラムってどんな意味があるのかな。そして本題の『インタープリテーション』。そして『生涯学習』。人間の一生涯で環境教育をしていくにはどうしたらいいか。そしてキープ協会ではどんな実際のプログラムをしているかというお話をしていきたいと思っています。
 キープ協会は、この場所にあります。ちょうど日本の中でも真ん中に近いでしょうか。山梨県の北端です。八ヶ岳高原という所に位置していまして、年間で約500万人の観光客が訪れるような所です。規模だけですと100万人ちょっと位かなという数字です。東京から来たらすごく来やすいんですね。ただ最近では日帰り圏内に入っていて、宿泊施設がどんどん潰れています。すごい苦しい状況です。キープというのは『キヨサト、エデュケーショナル、エクスプリメント、プロジェクト』。英語になっていますが日本語にするとキヨサト、エデュケーショナルは教育、エクスプリメントは実験、プロジェクトは計画という事になっています。
 アメリカのポール・ラッシュという人がいたんですが、昔、第二次大戦後にGHQでマッカーサーと一緒に来たことがあるという人なんです。もともとは関東大震災の前くらいから日本に来ていたんですが、日本で青少年教育をしたいと思って来ていたんです。1948年に創立しましたので、今年がちょうど60周年を迎える団体です。当初から色々な活動をやっていたんですが、その中で今は国際交流と環境教育というものが大きなキーワードになっています。僕はその中でも特に環境教育というものの活動をしています。色んな取り組みをしていまして、宿泊施設が敷地にあります。敷地は240如東京ドームでいうと約40〜60個分の広さなんですが、その中に全体で300人〜400人位泊まれる宿泊施設があります。その宿泊施設の運営をしたりとか国際交流の仕事もしていまして、今はフィリピンとかタンザニア、東南アジアやアフリカの国々に対してのサポートをする事があります。
 そして、農場を持っていまして、標高が高いとお話しましたが、この標高では農業をするのは難しかったのですが、その難しい中で酪農という切り口で農業を始めました。そして物販、物を売る部署がありましたり、僕がいる環境教育をやっている部署、そしてちょっと珍しいところでは保育園の運営もしています。そして教会があります。色んな事をやっているんですが、それがすべて教育という言葉・実験という言葉。ですからそれが教育活動である。そして実験ですから、他の所ではやっていないような取り組みを実験的にやっていこうじゃないか、という事がキーワードになっています。
 敷地が240任箸話しましたが、その3分の2が森、3分の1が牧草地、県有地なので県にお金を払って使わせてもらってます。秋になるとこの辺りも綺麗だと伺いましたが、紅葉で綺麗な渓谷ですね。僕らのところでもトレッキングのプログラムやっているんですが、このトレッキングのコース、山梨県でも有数の紅葉のポイントになっています。その中で色々な活動をしていまして、少しだけプログラムの活動の紹介をします。

環境教育のシンボル
 森林管理のプログラムをしていまして、それは『森を楽しむ週末自習体験』という事で、自然保護の整備をお金を貰って、参加費頂いてやろうと言うことです。僕らのところでも実は今日歩かせて頂いた、木のチップを敷き詰めた自然舗道があります。その舗道は、ここのように固めたものじゃなくて木のチップを細かく敷き詰めているんですね。ですから雨が降ると流失してしまうんです。その流失したものを参加者を募って敷き詰めていく作業をやってます。
 関東近県東京周辺で「森の中で何か活動したい、そして森に対して貢献したい」という人は沢山いるんです。ただ、その人達が活動できる場所と機会が実は少ないんですね。そこで僕らは自分達もスタッフが少ないという部分もありますが、僕達がしきれない部分を参加者を募る形でプログラム化しています。ひょっとしたらこの近くでもそれ出来るんじゃないかなと僕は思っています。
 キープ協会の職員は今、90人位いるんですが、牛は160頭です。ですから牛の方が多い状態なんですけどね。この牛も含めて、この牛が最近では『食育』という言葉を皆さんよく聞かれるようになりましたでしょうか。食べ物を通して教育するということ、それが今すごくキープ協会でも求められていまして、その食育の流れで酪農体験をしたいという小・中学校がすごく増えています。自分達が飲む牛乳とか食べ物がどこから来ているのか、そしてそれを見るだけではなくて牛達のお世話をする、そのお世話が間接的に自分達の牛乳にこう繋がっていくという事ですね。そういう食育のプログラムのなかでの酪農がすごく盛んですね。ですから言ってみれば、第一次産業を活用したプログラムという事ですね。
 そして色んな活動をしているんですが、地元の子供達向けに僕らは月1回、自然遊びの活動を提供しています。『キヨサト子供自然クラブ』という会です。僕はそこの校長先生をしているんですけど、その活動を月1回やったりとか、家族向け、親子向けの活動が主です。ただし、キープ協会として主催をしているプログラムは対象を大人をメインにしています。ただ林間学校とか移動教室などで沢山の子供達が来るので、受け入れる事業を入れていくと子供が圧倒的に多いんですが、キープ協会として企画を考えて募集するもの、主催理由とするもの、これは大人がメインです。なぜかと言うと、環境問題を引き起こしているのは大人だからです。そしてよく子供に対しての教育は必要だと叫ばれるんですけどもちろんそれも必要です。ただ、その中で子供を教育して、今起きている環境問題を解決すればいいですけど、言ってみれば、『今起こっている環境問題、あとは君達に任せたよ』という事が多いんですね。でもそうじゃなく、やっぱり大人が環境問題を引き起こしたのであれば、大人が少しでも環境問題をなくしていく、という取り組みをやらなくちゃいけないんじゃないか、その為には、まず大人の教育が必要だという事で、僕らは大人を対象にしていくことが多いです。大学生を対象にするような事業を行っています。まずやっぱり大人が変わるという事ですね。
 先ほども紹介しましたが「やまね」という動物がキヨサトのシンボルです。そして、牛、ジャージー牛という牛なんですけど、僕は自然体験とか地域づくりをするにあたってのポイントは、シンボルってことかなと思います。そのシンボルは動物でもいいでしょうし、花でもいいのかもしれませんし、山でもいいのかもしれません。そのシンボルというのが「何かみんなでやっていこうよ」、という動きを支えてくれるといいますか、自分達が何のために活動しなくちゃいけないのかな、と疑問に思った時そのシンボルのことを思い出せば、解りやすいんじゃないかなと思っています。
 やまねという動物は非常に森に依存しています。森がないと生きられない生き物なんですね。ですから『やまねを守ること=森を守ること』になるんですね。子供達に対して森を守ろうというのはなかなか解りにくいんですけど、『こんなかわいいやまね守っていきたいね』と、そうすると子供達は『あぁ、やっていきたいね』と思うようになるんですね。そのシンボルを守っていく、それが大人であれば花とか植物が大きなシンボルになるのかなとも思っています。僕はそんなシンボルとして山とかジャージー牛というものを育てています。

アプローチの考え方
 少し環境教育のところの話をしたいと思ってます。よくこんな話をするんです『環境問題』。この問題が起きているのは皆さんご存知の通りですが、それを解決するには3つの方法があるんじゃないかと思います。
 1つ目は規制。それはルールを作るという事です。税金の仕組みを作る。あるいは法律を作る。という事ですね。たとえば、僕らが活動している八ヶ岳の少し離れた所には「上高地」という国立公園があります。上高地はマイカー規制をしています。どこどこまでの駐車場までは車で行ってもいいんだけれども、そこから先はみんなでバスで行くという事ですね。ルールを作るという事です。何故かと言うと、排気ガスによっての問題をなくしていきたいという事ですね。ある程度ルールを作る・きまりを作るというのが規制という方法だと思います。
 2つ目は技術革新です。環境に付加を懸けたような技術とか、製品を作るという事です。最近で言うならば、車、ガソリン車が多いんですけど、ガソリン車じゃなくて、ハイブリットの車とか、電気とガソリンの車、あるいは最近では電気を使った車がどんどん研究されてますけど、そういう事もあるのかもしれませんね。地球環境に負荷を掛けないような技術とか製品ですね。ひと昔前でいうと冷蔵庫に使うフロンなども問題視されていましたが、技術の力をもって解決しようじゃないかという方法です。
 3つ目は、今日お話しようと思っている環境教育です。それはそもそも環境問題が起きないような、とか、ライフスタイルの変化を目指していこうじゃないかというものです。 上の2つは何か事が起きた時に対する方法、対象療法というものに対して、環境問題は根本療法と言われています。環境問題がそもそも起きない社会を作ろうじゃないかということです。ただこれは、どれがいいかという事じゃなくて、実は環境教育というのはこの上の方にもすごく関わっていまして、どこかで規制をするって事です。
 この霧立越の周辺でもですね、ここまで来る時には自分の車じゃなくてある所の駐車場に止めて、そこからみんなでバスに乗って移動してこようよ。というルールを決めたとします。或いは、ある商品を買うとプラスアルファで環境に税金が掛かって、その税金を使って環境問題に対して取り組みをしようというふうに決めたとします。そうすると、きっと何で今、便利な状態なのにわざわざ我慢して決まりを作らなくちゃいけないのか、疑問に思う人もいるかもしれません。そういう疑問を持っている人に対して理解を促していくものが環境教育なんです。そして一方で技術革新ですね。今まで100円で作ることができた製品を環境に付加を掛けない方法でやろうと思った時に1000円かかるとします。何でお互いお金を懸けてまで環境に付加を掛けないものを作んなくちゃいけないんだろう。と文句を言う人もいるかもしれない。そういう人に対して理解を促していくのが環境という風に僕は思っています。
 環境教育ってすごく幅が広い、あるいは色んなものに関わってくるものだなぁと思っていますので是非皆さん、こんな考え方があるんだという事を知って頂きたいなぁと思います。環境教育を扱うまえにはすごく多岐にわたっているのが特徴であり、ぼやけてしまう弱点かなと思っています。僕らは自然体験とか自然保護をキーワードにしてやっているのですが、僕らの仲間の団体では、平和とか国際理解、民主主義とかエネルギーとかごみリサイクルというのをキーワードにしてやっていることもあります。これも実は環境教育なんです。で今日のキーワードかなとも思いますが、身近な自然の体験というものを環境教育にということですね。そんな幅広い中でどんなものをやっていきたいんだという事を確認しようということで、こんな図をつくってみました。
 縦の軸は地域的なアプローチと地球的なアプローチ、横の軸は暮らしとか社会を扱うもの、人間同士の関係を扱うもの、もう一本は自然とか生態系を扱うもの、そして自然と人間との関係を扱うもの、ここに色々な環境教育を起こしてみるとこうなるんだなぁと思っています。まず自然系でいう環境教育は地域。地球の下にあるには、むしろ地域の事を知ろうよ。その時に切り口が自然のことを知ろうよ、という事ですね。今回のこのフォーラムも1つその切り口かなぁと思います。「地域の自然を再確認しようじゃないか」というのが自然系と言われているものです。
 一方でその反対側には生活系と言われているものがあって、暮らし、社会を扱っていこう、そんなものが反対側にはあるのかなと思っています。そしてその下側には地球系と言われるものですね。もっと地球的な規模で活動しようよ、外国に行って植林活動しようよ、今、地球温暖化がすごく叫ばれています。その為に何が出来るのか考えようよ。日本にはまだ影響はないですけど、ある国ではどんどん国が沈んでいくなんていう状況もありますけど、そんなことにも目を向けていこうよというのが地球系という事ですね。そしてそれを統括するのがあるのかなと思っています。

平和な社会づくり
 少し具体的な活動を落としてみると、自然系の中には自然体験のキャンプとか、生き物の観察会とかビオトープと言って生き物が暮らす最小の範囲、そういうビオトープという所を学校に作ろうよという動きが盛んですけど、そういうものがあるのかなと思います。生活系の中には、リサイクルとか、食育、エネルギーのことという事を学ぶようなものがあるかもしれません。地球系では異文化調整という言葉を入れていますが、これは最近日本にはどんどん外国人の人が働きに来ています。その働きに来ているお父さん、お母さん、そしてその子供達が地域とか地域の学校に入れないという問題が今全国で生まれています。僕は兵庫県出身という風に言いましたけど群馬県には今、沢山のブラジル人が働きに来ているんですね。その中で地域に入れてないという問題が大きいんです。それを解決しようというのも多分、異文化調整という言葉なんです。
 こんなに幅広いものかなと思うんですが、それを今回、僕は森林環境教育ということでお話をしていますので、森林環境教育をそれぞれの中に落としてみると何かなぁと考えてみました。自然系でいうならば、森を歩くという事ですね。今日も歩きましたよね。皆さんの森を歩くという事とか森の中での遊びという事もそうかもしれません。僕らはよく子供達と森の中に入って秘密基地作りをやったりします。そんなことも森の中の森林環境教育のなかで自然系と言われる活動かなと思いますし、生活系でいうと森林管理というものがプログラムとして僕は成立するかなと思っています。
 間伐再生と枝打ちをするという事ですね。そういう活動を何の為にしているかというと、人間の為に森林管理をしている訳です。あるいは森の為に森林管理をしているのですが、その切り口が生活系と言えるのかなと思います。最近、僕らの人気のプログラムとしては、枝打ちをしてよい木を育てるという活動がすごく人気があります。枝を打ち落として自分のナイフで削るんですけど、すごく没頭するという参加者の人達が多く、大人も子供も一生懸命でそんなこともあるのかなとも思います。
 森の中には恵みが沢山あります。食べることが出来るとか、生活に応用できるとか、森の恵みとか知恵を引き継いでいくという事が森林環境教育かなとも思っていますし、森林の文化を、というのを扱うのも環境教育かなと思っています。僕は3日前に岐阜県にある森林文化アカデミーという専修学校で話をして来たんですけど、森林文化を築いていこうという系列の学校なんですけど、そういう動きが今行われています。しいて言うならば海外の下見ツアーとして植林をするよというツアーですね。とか国際交流、森の中での活動を外国人と一緒にしようよ、なんていう事で国際交流しようなんてキャンプも入るのかなと思います。
 環境問題を解決する為の方法として環境教育があるならば、そもそも環境問題は何故起こるかという事を考える必要があるのかなと思います。2つの理由があって、1つが自然と人間との関係が崩れているという事、以前はこの不等号が自然の方を向いていたはずなんですね、自然の中で僕らは生かされていたはずなんですけど、いつの間にか人間の方が偉いという状態が生まれているんじゃないですか?。これが自然と人間との関係の崩壊という事かなと思っています。公害とか必要以上の開発、野生生物の減少というのがこれに含まれているのかなと思います。ただ僕はもう1つの理由のほうが環境問題の原因として大きいのかなと思っています。それは、人間と人間との関係の問題という事です。いつの間にか人間が人間じゃないという関係になっているんじゃないかという。どんな人間どうしか。都会と田舎の人達、あるいは先進国と途上国の人達、この人間達の関係がいつの間にかイコールではないという事、これが環境問題を引き起こしているんじゃないかなと思っています。
 僕は山梨県のキヨサトというところに住んでいます。合併してから、北杜市という市になりました。山梨県で一番広い市なんですが人口4万人ほど。山梨県の中では凄く人口の少ない市なんですけど、そこに住んでいる僕と東京近郊から来る人達との意識のズレをやっぱり感じるなぁと思っています。皆さんの場合いかがでしょうか?この周辺にお住まいかもしれませんけど、このお住まいの所と全然違う所から来る人達との意識、このギャップというものが環境問題を引き起こしているのかなとも思いますし、僕はずっと環境問題あるいは環境教育を学ぶ中でこんな事を学んでいます。
 最大の問題は『戦争』である。『戦争』今も世界各地で戦争や紛争がおきてますけど、その戦争が起きてしまうとその国に生きている動植物、何も罪の無い生き物達が死んでいっている状態があるんですね。この戦争を無くしていくこと自体が環境教育を扱っていくことじゃないかという風に僕は思っていますし、そう言われています。戦争は人を殺すだけじゃなく自然も壊しているという事ですね。そして環境教育とは何かと言われたら、この2つの関係を修復していくもの、関係を良くしていく事が環境教育なんだと言う事になる訳です。
 では、環境問題の無い社会ってどんな社会かなと。これを僕らは持続可能な社会という風に呼んでいます。ちょっと解りにくい言葉なんで僕は、小・中学生に話をする時には「それは誰にとっても平和な社会だよ」という風に言っています。じゃあ誰にとってなのか。まずは自然にとって平和だろう。植物・動物、一見命がないような石とか岩にとっても平和な状態、それが平和。何にとっても平和。そしてもう1つはやっぱり人間ですね。それは今の世代、それは日本だけじゃなくて日本と他の国に生きている人達の関係もそうでしょうし、将来の世代もそうでしょうね。また作っていくのも難しいかなと思っています。
 「誰が実現するのか」、よく言われています。それは、実現するのは皆さんという事ですね、あるいは僕です。この社会を作りたくて僕はその活動をやっているつもりです。誰にとっても平和な社会ができれば環境問題は無くなるはずだという風に思っています。改めてそう考えると環境教育というのは持続可能な社会、誰にとっても平和な社会というものを実現しようじゃないかという方向の教育活動を進めていくものですし、地域的にも地球的にも子供から大人まで全ての人を対象にしなくちゃいけないという事です。
 環境教育のキーワードは『人を育てるという事です』。ですから今回このフォーラムでも、自然体験を通して地域を何とかしていきたい、というお話だと思いますが、地域を何とかするのがやっぱり人なんですね。なので、環境教育がしたいというのは人づくりです。ですからやっぱり地域作りをするのも、環境教育をするのも人づくりかなと僕は思っています。

インタープリターとは
 では、森林環境教育て何か。単純に言ったら『森林を舞台にしたような環境教育です』。そして、森林環境教育ってやっぱり日本に不可欠かなと思っています。皆さんご存知かと思いますが、日本は67%が森と言われていますね。山梨県は78%が森なんですね。ちなみに宮崎県の森林率は90%。すごいですね、森が多いですね。やっぱり九州にとっても環境教育をするには、森林環境教育、森を舞台にするって大きいかなと思いますね。日本は、森が不可欠かなと思うんですね。その不可欠である森を対象にした、フィールドにした環境教育が僕は大事かなと思っています。それがきっとこの周辺では出来る、あるいはもうやってらっしゃるのかなと思います。
 その環境教育をするにあたってのキーワードは『体験』という風に言われています。では体験て何かなと。紐解いていくと僕は『出会うこと』という風に考えています。『体験する』=『出会うこと』。何に出会うのか。まずは自然そして人に出会うという事ですね。その人というのは他者であり自己であるかもしれません。出会うと何かが起こると言われていますね。『あぁ、この花綺麗だな』そんな気持ちが起こる。あるいは昔からの文化に触れた時『昔の人は、こんなに工夫して森の中で生きていたんだな』。そんな時に気付く自分がいるかもしれない。あるいは、その文化を引き継いでいる人との出会いがあるかもしれない。その出会いという事が実は体験の一番の原点かなと思います。ただ、何かが起こる、綺麗だな、凄いなと思う人もいれば、何も起こらない人もいるんですね。それが起こらないと言うよりは、起きてる事に気付いてないってだけかなと思っています。
 実は、この起きていないという人が大半なんです。起きていない人に対して気付かせる行為の事を『インタープリテーション』。森の中に入るって凄く面白い事なんです。面白い事をただ一方的に話をするだけじゃ気付かないかもしれないので、色んな遊びを通して、体験を通して伝えていくというのがインタープリテーション。その気付きを促すような活動がインタープリテーションですし、気付かせる人の事を『インタープリター』と言っています。僕もそうですし、今日、僕は秋本さんのところでずっと説明頂いていましたけれど、秋本さんがインタープリターという事ですね。気付かせる人。
 こんな事を少し話をしてみたいと思っていますが、環境教育における体験という事。キープ協会は、自然体験型の環境教育をやっているという風に考えています。それはキープ協会が先ほども言ったように、森と牧草地で構成されているんですね。自然が沢山あるので自然を使っていこうよという事ですね。都会には都会の環境教育がありますし、森には森の環境教育があるという事です。僕らがやっているのは非常に遊びに近いかなと思います。遊びとか体験とか色々な作業を通して自然の美しさとか不思議さを感じる感性・センスを育んでいこうじゃないかという事と、もう1つのキーワードが『何かやってみようかな、これだったら自分にも出来そうだ、今日この枝打ちの体験をして箸を作る体験をしたけど、これ自分の家の近くでも出来るかな。身近な所を歩いて植物が綺麗だと思ったからちょっとブラブラ歩いてみようかな』。そのような思いを持ち帰ってもらうという事を僕らはやっていきたいと思います。
 感性と思いとで普段の生活を見つめなおしてもらうと何かしら発見があるかもしれない。あるいは、それが行動のきっかけになるかもしれない、というのが僕らがやっていきたい事です。ただ注意しなくちゃいけないのは、体験だけで終わるんじゃなくて、その体験がスタートなんだという、切り口でしかないということです。そのままにしちゃいけないということですね。体験しておしまいではなくて、その体験を通して何を伝えたいかという事が大事ですね。その体験のことを考えて皆さんにまたちょっと質問してみたいと思います。
 ある学校がこんな研究をしました。自然体験についての調査研究です。東北地方と関東地方の小学生と中学生に対して、『あなたはどんな自然体験をやった事がある?』あるいは『あなたはどうして自然体験をやった事がない?』と調査したんですね。これから僕が項目を出しますので、何をしていないか、今の子供達がどんな体験をしてないか、というものを皆さんにも考えていただきたいなと思います。項目はこんな事です。
 1番、星を見たこと。2番、海や川で泳いだこと。3番、湧き水を飲んだこと。4番、自分より高い木に登ったこと。5番、木の実や草を食べたこと。6番、蝶やトンボを捕まえたこと。7番、外でヘビを見たこと。8番、鎌や鉈を使ったこと。9番、金づちで釘を打ち付けたこと。10番、外で火を燃やしたこと。この中でやった事のないものをチェックしてね。という質問をしました。
 複数回答あります。その結果、何がやった事が無いとして上位に来たかという事を皆さん考えて欲しいなと思うんですが、ここは九州ですから関東と東北とちょっと違う部分がかもしれませんが、でもほぼ似たような結果だと僕は思っています。以前、違う研究の結果を僕は見たことありますけれど、日本全国でいえば多少の数字のぐらつきはありますけど、九州も同じようなものかなと思います。
 ちょっと皆さん考えて欲しいんですが、この中で体験したことが無いものとして上位三つ位に入っただろうというものを考えてみて下さい。そして僕が1つずつ言っていきますので、これは上位三つ位にはいっているかなと思うところで手を上げてください。皆さんにとっては全部当たり前のようにやったものかもしれませんけれど、ちょっと前の今から3年・4年位前の子供達は何をやった事が無いものとして選ぶのかという事ですね。

 結果は、1番が皆さんの想像どうりで鎌や斧を使ったこと。2番が木の実や草を食べたこと。3番が湧き水を飲んだこと。これが体験として少ないという事だったそうです。でもこれって言ってみればですね、環境教育とか森林環境教育とかで提供出来ることだと思うんですよ。ですから子供達に不足している体験をこの地域だったら提供出来るんだよ、という事がうまく伝わっていくと沢山の人を呼ぶ込む事が出来るんじゃないかということですね。  僕らがやっている活動も、実はあまり難しい事じゃなくってこういう事が多いんですよ。何か歩いてみるところで食べられそうな野草を食べてみる。木の実を食べるという事。そして東京近郊では出来ないことなんですけど、湧き水を飲むという事です。この周辺は水も綺麗だと伺っています。この中のキーワードでどんなことができるのか。あるいは森林管理をするという事を通して鎌や斧を扱うという事も出来るでしょうしね。今後のこの場で何が出来るのかということの参考になったらいいなと思います。

 プログラムというお話を少しだけしたいと思います。プログラムってそもそも何か?という事なんですけれど、僕はプログラムという言葉、僕も平気で使っちゃっているんですけれど、プログラムという言葉はどんなところで聞いたりしますか。こんな場面で聞いたとか、こんな所で見たとかありますか?。プログラムて色んな所で聞いたことあると思うんですけど、テレビ、コンサート、イベント、運動会、結婚式、などですね。広辞苑で調べてみると、番組・予定・計画・コンピューター指示など色々書いてありますが、意図がある組み合わせという事ですね。
 意図がある、なんとなく、例えば結婚式でいうと、新郎、新婦の入場から始まって、来賓からの言葉、あるいは何かしらの出し物、そして最後はクライマックスとしてお父さん・お母さんからの挨拶などがありますけれど、その流れが結婚式自体をぐっと盛り上げる為の組み合わせと考えられています。あるいはコンピューターのこのキーとこのキーを押すとこの動作になるというのがありますね。
 僕らが環境教育や自然体験でプログラムという言葉を使う時には、こんな風に使ってます。『特定の狙いをもった教育活動』ということです。特定の狙いとは何か。それは「地域の自然のことを守っていこうよ」とか、「自然に対しての不思議さを感じていこうよ」、そんな狙いかもしれません。その狙いがないとプログラムとはいえないという事です。
 プログラムの中で、小さなひとつの事をアクティビィティと呼ぶ事もあるという事ですね。プログラムが商品というならばアクティビィティは部品。もう少し解りやすくいうと、車がプログラムだとするとハンドルとかタイヤがアクティビィティとなるということですね。今回のこのシンポジウムでいうならば、森を歩いた午前中の時間が1つのパーツですね。部品、アクティビィティでもいいかもしれません。そして僕の今のお話もアクティビィティかもしれませんし、そして全体で今日一日の活動になるという事ではフォーラム自体がプログラムといわれるかもしれません。
 そのプログラムというのが色々な種類がありまして、間接といわれている指導者が登場しないもの、人を介さないもので直接という、今日ご案内頂いているように、指導者が案内という形のものを直接という風に呼んでいます。
 間接には何があるかというと博物館の展示とか自然歩道の案内板とかですね。そこに人が立っていなくても、案内人がいなくても解るようなものが間接というもの。直接が今日ご案内いただいたようなものです。
 この中でも、いろんなスタイルがあって説明型という一方的に話をするスタイルもあれば、キャッチボールをするようにQ&A、クイズを出して答えてもらうようなやり取り型というものもあるが、参加者主体型という、参加者に対してきっかけ作りの話をして、そこから参加者自信が過ごしていくようなものもあります。
 以前は、このやり取りや、説明型というのが多かったですね。説明型は場合によっては退屈になってしまう。一方的に話を聞かなくちゃいけないんで。で、一方的に聞くよりは、やり取りをする。これなんでしょうね、とクイズを出して答えてもらうような方法。そして参加者の人みんなに関係を促していく方法。これらがどんどん増えていると言われています。色んなスタイルを使い分けて行きましょうよという事です。

 今日の本題であるのインタープリテーションの話をしてみようかなと思いますが、インタープリテーションという事を理解するのに、ちょっと質問してみたいと思いますが、「ご出身はどちらですか」。「五ヶ瀬町の地域の自慢というかお勧めの食べ物とか、お勧めの場所とか、何かお勧めの物ってどんな物がありますか?」。山菜ですとか、やっぱり料理が美味しいという事ですね。
 実は今僕が質問させて頂いた事がインタープリテーションということを理解するのに役に立つかなと思います。インタープリテーションというのは、そもそも翻訳とか通訳という意味です。英語を日本語にする、とか、そういうことなんですが、僕らが環境教育の中で使う時には、自然界の言葉とか歴史や文化の意味を人間の言葉にするという事ですね。自然語を人間語にする。あるいは文化とか歴史の発している言葉を人間語にするという風に考えるとわかり易いかなと思います。
 今、質問させて頂きましたけど、インタープリテーションの事を理解するという事を、こう考えています。
 情報伝達、「ご出身はどちらですか」と質問させて頂きました。そうしたら町内ですとお話頂きましたが、その回答が情報伝達ですね。どんなことかと言うと、右側の部分が?マーク、そして僕が質問しました。どちらの出身ですか。そしてお答え頂きました。それは自分の出身地というのを自分の頭の中にインプットされている訳で、その情報はそのまま僕にお伝え頂いた、五ヶ瀬町ですよということを回答頂きました。それが情報伝達かなと思います。
 そして一方で、インタープリテーションて何?。この地域の自慢て何ですかという事をご質問しました。今回はですね。いつもPRされているかと思いますが、スラスラとお答え頂きましたが、地域の自慢て何だったかなとお考えになる事もあるかもしれません。で、その答えというものがインタープリテーションかなと僕は思っているんですが、地域の自慢何だったかなと、自分なりに考えるとか解釈をするというステップがある。その解釈をして考えるような事をした上で伝える活動のことをインタープリテーションという風に思っています。
 I.Pとはインタープリテーションのことですけれど、情報伝達+解釈という事ですね。少し整理してみると、情報伝達とはAをAとして伝えること、これが情報伝達です。じゃあインタープリテーションて何か。それはAをA+αとして伝えること、もしくはAをBとして伝えることです。
 『ここに生えている木は、何とかという木ですよ』という、それを伝えることはインタープリテーションじゃないです。『ここに生えている木は何々ですよ』、『実はこの木は昔からこの地域ではまな板に使っていたんですよ』、『この葉っぱが出始めた頃の山菜が美味しいですよ』その、ぱっと見ただけでは解らない+αの部分を伝えていくという事がインタープリテーションという事ですね。今日、僕は秋本さんのお話を聞きながら色んなお話しましたけど、ただ植物の話だけじゃなくて、文化のことであるとか、奥側あるいは裏側の部分を伝えていくというのがインタープリテーションという事ですね。
 いわゆる、この植物に詳しい人が途絶えてしまうとインタープリテーションじゃなくなってしまうという事ですね。それ+αというのを考えていこうよという事です。インタープリテーションのことを解釈と呼んでいますが、音学が好きな人はインタープリテーションの事をこのように使うそうです。クラッシックとかジャズとかを自分流にアレンジして演奏することをインタープリテーションと呼ぶそうです。あるいは僕の知っている牧師さんはこんな事言っていました。キリスト教の伝道師がキリストの教えを自分流の言葉で伝える事をインタープリテーションというそうです。共通していえる事は、情報を自分なりに解釈をするという事ですね。キリストはこんな風に言っていたのか。じゃあこんな風に伝えていこうか。あるいはこの音楽自分流にアレンジしよう。自分なりにまず一旦入れて解釈した上で伝えるという事です。その為にも、自己とか価値観を持つという事が大事です。自然を大事にしたいなあという価値観を持った上で伝えていえばそれがインタープリテーションになるという事です。
 そして最近ではこんな風に言われています。インタープリテーションというのは『橋渡し役』なんだという事ですね。インタープリテーションを行う人のことを僕らはインタープリターと呼んでいますが、インタープリターは橋渡し役と言われています。それは『自然と人との橋渡し役』。但し、最近では、もっと軒並みに伝わるようになっています。それは『人と人との橋渡し役』という事です。僕らのところには移動教室でたくさんの子供達が来ます。先生方にどんなプログラムがいいですかという質問をすると、『普段、都会にいるので自然の中で過ごす機会が少ないので自然の中で沢山過ごさして欲しい』と、そこで僕らはキヨサトの自然と子供達である人を繋ぐ橋渡しだなあと思っているんですが、もっと突っ込んだ話をしていくと、『まだまだ学校に入ったばかりの子供達なので友達ができていない。友達作りができるような活動をして欲しい。』と言われる事もあります。そういう時に僕らは自然を舞台として子供同士を繋ぎ合わせるということですね。そうなって僕らは一つ一つの橋渡し役であるかなと思っています。
 例えば、この地域で言ってもそうかなと思うんですね。昔からの文化を引き継いでいるおじいちゃん、おばあちゃんがいるかもしれません。その文化を引き継いでいく人がいて、そこを訪れる人に橋渡ししていく人って必要じゃないかなと。それがインタープリターになるという訳です。よく、インタープリテーションていうのはこんな風に説明するんですよ。また、『見えるものを通して、見えないものを伝える教育活動である』という風に言われています。ですから言ってみれば、言葉を変えてみると「体験を通して自然界の意味を伝える教育活動」、「体験を通して文化の価値を伝える教育活動」である、と。それがインタープリテーションという事ですね。これが大事なキーワードかなと思います。
 インタープリターは色んな情報を得ていますね。自然界の情報とか文化の情報、そして今日来る参加者の情報も得ています。それに対して自分なりの解釈を加えて人に伝えている訳です。伝える方法は、見えるものを通して、体験を通して意味を伝えるという事になるという事ですね。こんな風に思って頂けるとインタープリテーションをご理解頂けるかなと思います。まあ、インプット、そして編集をしてアウトプットをするという流れになっているのかなと思います。

 最後にキープ協会としての事例紹介も含めて、僕がやって来ている生涯学習、人間の一生涯をどのようにやって行ったらいいのかという事のお話をして終わろうかと思います。僕らは人間の一生涯に「イン」、「アバウト」、「公」という三つの要素があるといわれています。この中でですね、まだ小学校に入る前の小さな子供の場合には、『IN』という要素が必要じゃないかという事ですね。INというのは『〜の中で』という意味です。ですから『自然の中での環境教育』、『社会の中での環境教育』という事になります。
 直接体験とか学習とかいう事が思い切りやろうという事が、要素の中で必要とされているという事です。今日、一緒に給食を食べさせてもらう中で少しお話をしたんでけれど、最近はガキ大将が居ないんですね。以前はガキ大将が色んな人間関係の事とか自然の事とか教えてくれたこともあるんです。そのガキ大将は言ってみれば人間関係を教えてくれる人でもあったんですけど、そういう役割というのも減っているんですね。その人間関係の中ですとか自然の中にこもっている要素が小学校に入る前の子供達にとって必要じゃないかという事です。
 ちょっと事例を紹介すると、僕がやっている、清里自然子供クラブという活動ですね。月に1回やっています。4月の時には、マイブランコを作ろうという活動をしました。森の中に入って、グループで木を切り倒して、その切り倒した枝を使って自分達でブランコをロープを掛けて作りました。あとハイキングをした時に八ヶ岳周辺に固有の植物と言われているんですが、『ヒメコマツ』という針葉樹。ちょっと不思議な木で僕らは、ぶしの木と呼んでいるんですけど、このぶしの木までを探検をしに行った事もあれば、秘密基地作りをやった事もあります。この時はちょうど研修員の人達が来ていたのでその人達と一緒にやりました。
 子供が嬉しそうにする事は、大人も嬉しそうですね。但し、僕らがプログラムを提供するよりも子供達が自主的に遊ぶ事のほうがうまいですね。遊びを作り出している。そしてある子供は『おーい、自分を葉っぱの中に埋めてくれよ』と近くの友達に言いました。そして顔だけ出して埋めてもらったら、『葉っぱ、暖かいよ』なんて話をしていましたけどね。この遊びを作り出したのも子供自信でした。子供自身はこちらから仕掛ける以上に遊びを作り出すという事があるのかなと思います。
 で『IN』という要素、自然の中で育つ要素は僕ら大人にも必要でして、キープ協会が今取り組んでいる、森林セラピーのプログラム、『診療時間』という風に呼んでいます。これは単純なんですけどね。『五感』を使って森を過ごすという事です。この人は葉っぱをクシャクシャと揉んで匂いを嗅いでいるところですね。森林セラピーのキーワードは『五感』という風に言われています。その五感をフルに使うようなプログラムですね。
 あるいは森林療法の中で『作業療法』という方法があります。森作りをするという事です。森に対して貢献をするという事が、貢献できた自分、何だか嬉しいな。この嬉しいという気持ちが自分を健康にするというものなんですけどね。この時にはもう大分枯れ始めている枝、木を切ったりなんていう活動もします。あるいはもう単純に森の中にハンモックにユラユラ揺られるだけでも、森林セラピーにもなるんですね。

 生涯学習での環境教育、それはアバウトという要素です。『〜について』という事で、自然についての美術とか知識を学ぶような教育という事です。小・中学校が主に果たしているのかなと思いますね。あるいはこの霧立越え周辺の文化を知る、自然を知るという事もこのアバウトというところに入っているのかなと思います。
 事例で言いますと、これも子供クラブの中の事なんですが、セミの抜け殻調査をします。子供たちが森の中に入って、どんな抜け殻があるのか、どの木についていて、どれぐらいの高さなのか、何の種類なのかということを調べていく事で、森にある木とかセミの種類を調べる事が出来る。
 あるいは、ある時にはこの辺りもシカの害があると聞きましたけど、清里も今凄くシカが増えています。シカの角探しという事をしました。皆で森の中を一列になって自分の歩く前の方だけでいいからじっくりと下を観察してね。そこで森の中を横断しながら探したんですけどね。この時には見つからなかったんですが、シカの糞はもちろん沢山ありましたし、シカの寝床なども沢山ありましたね。
 そして、僕らの所には「やまね」という生き物がいるとお伝えしましたが、この「やまね」の事を調べるような事もやっています。「やまね」が巣を作るのは、僕らの所にはつつじが沢山あります。つつじがテングス病という病気になっているんですが、その病気がちょうどやまねの巣になります。その巣の事を調べて発表をするような、そんな活動もしています。
 最後は『公』という事ですね。自然の為の、人間の為の、文化の為のという事ですね。先ほども言いましたが、環境教育は人づくりです。その為にはきっかけを作るという事です。僕らは森を楽しむ週末自習体験活動をしていまして、それは森づくり、あるいは自然歩道の整備という事ですね。森の中に入って、僕らの所は国定公園なんですが、胸高直径が6センチ以下の物だったら切っていいということになりますけれど、その材を頂いてその材を使って杭を作り杭を打ち込んで、針金とかを使わないで杭を縫うような形で柵を作って、そこから先は入れないようにしてねという事にしているんですね。
 メンテナンスは一年ごとにやらなくちゃいけなくて、大変な作業ではあるんですけど、自然で何か自然物を使った、先ほどで言うならば知恵ですね、というものを体感出来るようなプログラムという事ですね。そして一方で自分が役に立つかということで、参加者の方は充実感もありますけどね。そんな達成感とか充実感を味わって頂くという事も大事な要素です。そうすると『自分でもこんな事が出来るんだと』そこから『公』という部分が始まるのかなと思っています。
 この環境教育のことを理解するのに、曲線が二つありますが、上の曲線の上がINという要素、曲線の間がアバウト、下の曲線の下が「公」ということで考えると、幼年期、幼年期でぶつっと切ったとしますと、やはり比重があるのは「IN」という要素になるわけです。子供たちの場合、やっぱり思い切り遊ぶという事です。但し子供たちの場合にも、「アバウト」の要素があるんですね。幼児であっても何か知るという要素があってもいいだろう。そしてこの辺ちょっと途中で切れちゃっているんですが、この下の曲線、実はもうちょっとこっちにきているんですね。だから幼児にとっても何かできる事も必要かなとも思いますし、学齢期の比重は「アバウト」が多いんですが、それ以外の「IN」と「公」も必要。そして大人になると「公」という要素も必要なんですが、最近の大人は自然体験してない大人が多いですね。
 自然体験していない大人が、子供にしたいようにしても無理がある。という事は大人にとっても「IN」という事が必要なのかなと思います。僕は魚捕りのプログラムを年何回かやっているとお伝えしましたが、魚捕りをすると子供たちが嬉しそうに、ブクブク潜るんですね。『初めて魚捕ったよ』と嬉しそうに来るんですよ。でその後ろから少し恥ずかしそうに大人の人も来ます。僕の所にちっちゃな声で『実は僕も初めて捕ったんですよ』と大人が多いんですね。という事は大人の人も自然体験していないんですよ。そのしてない大人の人が『自然て大事だよ』てやっぱり言えないですね。という事はやっぱり大人にとっても自然体験というのは大事という事です。年齢によって比重が変わりますよという事ですね。
 と、いう事で最後にですね、僕からのメッセージになりますが、環境教育はもう何処でも誰でも出来るかなと僕は思っています。家庭でも、学校でも、地域でも、行政、企業、NGO何でもO.Kだなと思っています。で、あまり難しく考えずに出来る事からやったらいいんじゃないか、自然遊びでもいいでしょうし皆さん、もうされていますかね、『マイ箸を使う』とか『マイカップを使う』とか、そういう事でもいいかもしれないし、『省エネをする』という事、『地域のゴミ拾いをする事』、何でもいいかな。あるいは通勤とか通学の雰囲気を楽しむという事ですね。で、その事を自分の言葉で伝えられればいいのかなと思っています。
 僕は、新しい言葉というか、自分の言葉でインタープリターという言葉を使っているんですが、どんな事かと言うと、僕はインタープリテーションという言葉は、特別な物じゃないし、インタープリターの存在自体が特別じゃないと思ってるんですね。何かしら仕事だからやるんじゃなくて、もう普段の生活の中でインタープリテーション出来るような人の事、季節の移ろいを感じるような人ですね、季節の移ろいを身近な人と共有できる人の事がインタープリターと言っているんですね。そんな事が広がっていくといいのかなと。
 僕は職業インターアプリターでもあるんですれど、同時に生活の中のインタープリターでもありたいなあと思っています。僕はインターアプリテーションという言葉、特別の事じゃなくて、もう暮らしの中に入っている事、生き方の1つかなと思っていまして、身の回りの変化であるとか、季節の移ろいを感じて、それを感じた事を伝えていければいいんじゃないかと。それがインターアプリテーション。そしてそれがインタープリターなので、是非皆さんもですね、地域の良さというものを身近な人に伝える、あるいは、そこを訪れる人に伝えて頂く、そうすると皆さん自身がインタープリターになって頂けるんじゃないかなという風に思っています。と、いう事で皆さんも是非一緒に環境教育というものに関心を持って頂いて、取り組んで頂けたら嬉しいなと思っています。是非今度は清里が僕のメインフィールドですので、そこに来て頂けると、僕らの森を歩いて頂ける事になるかなと思っています。という事で、ご清聴ありがとうございました。

おわり

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第13回霧立越シンポジウム
九州脊梁山地文化圏
平成22年10月24日〜25日


第12回霧立越シンポジウム
『柳田国男100年の旅』
平成20年7月19日〜21日




第11回霧立越シンポジウム
『自然体験とインタープリテーション』
平成20年5月10日(土)〜11日(日



第10回霧立越シンポジウム
西南戦役130年
平成19年4月21日〜23日



第9回・霧立越シンポジウム
過疎山村の町村合併を考える
2002年11月22日



第8回 霧立越シンポジウム
幻の滝を考える
2002年7月20日〜21日
 


第7回 霧立越シンポジウム
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第6回 霧立越シンポジウム
日本上流文化圏会議
1997年11月2日
 


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森とくらしのあり方を探る
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第4回 霧立越シンポジウム
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第3回 霧立越シンポジウム
霧立山地の植物
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第2回 霧立越シンポジウム
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第1回 霧立越シンポジウム
「霧立越を語る」
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森シンポジウム
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2009.03.10〜